村上春樹の新作短編小説集「女のいない男たち」あらすじと感想

村上春樹「女のいない男たち」(文藝春秋刊)

先日、日本を代表する作家「村上春樹」の
9年ぶりとなる短編小説集「女のいない男たち」が発売された。

この本には6つの異なる短編小説が含まれているのだが、
どれもそれぞれに趣があって、読後に余韻が広がるような
村上春樹らしい深い作品。

1Q84や海辺のカフカ、ノルウェイの森といった長編小説とは
また違った楽しみを感じさせてくれる。

昔から村上春樹が好きな私は(ちょっとミーハー心はあるものの)
早速購入して読み終えたので、
まだ読んでいないけど買うか買わないか迷っているという方に向け、
簡単なあらすじと感想をお伝えしようと思う。

尚、多少のネタバレは出てしまうので、ご了承のほど願いたい。

どうしても予備情報を入れたくないという方は
この続きを進めずに、さっさと本屋やAmazonなどで購入して
読んでしまうのが良いと思う。(どうせ1700円しかしない)

というわけで、本書に含まれる6編は以下の通り、
それぞれ順にあらすじと感想を書いていきたいと思う。

  • ドライブ・マイ・カー
  • イエスタデイ
  • 独立器官
  • シェエラザード
  • 木野
  • 女のいない男たち

1.ドライブ・マイ・カーのあらすじと感想

本書の1作品目にあたる「ドライブ・マイ・カー」
舞台俳優である家福(かふく)が主人公だ。

タイトルの通り、自動車での移動中における
専属運転手である渡利みさきとの絡みが
ストーリーの軸となっている。

その中で、流れで出てくるエピソード
「子宮癌の末に亡くなってしまった妻(美人女優だった)と
その不倫相手の一人であった高槻という2枚目俳優との話」
などが差し込まれ、スピーディーに展開していく作品だ。

自分という男がいながら(不仲ではなく良い関係性なのに)、
なぜか他の男と関係を持つ妻の心の内を理解できないうちに
妻が亡くなってしまったことで、
ある意味心の隙間を埋めることが出来なくなってしまった男の
静かな再生物語とでもいうべきか。

しかし万事解決ハッピーエンドにはならないのが村上春樹。

特に結婚して妻や夫がいる人は
読後の余韻が良い感じに響いてやまない良作だと思う。

2.イエスタデイのあらすじと感想

タイトルはビートルズの名曲「イエスタデイ」からつけられた。

主人公である僕(谷村)の友人、木樽明義は「イエスタデイ」を
関西弁で日本語詞に訳し
「昨日は/あしたのおとといで/おとといのしたや」と歌う
一風変わった男。

ストーリーは、この木樽との思い出を追っていく。

木樽は変わった男ではあるが、上智大学に通う彼女(栗谷えりか)がいて
しかもなぜか彼女を僕に文化交流と称して、
デートしたり付き合ったりするように勧める。

実際これが自分の立場だとすると、相当困惑する話で、
当然この話の僕と彼女も困りながらも実行に移していくのだが・・・

個人的な感想としては
世の中にはこういう人もいるんだなぁ
色々な人がいるなぁという知的好奇心をくすぐられる作品だった。

3.独立器官のあらすじと感想

またがらっと世界観が変わる3作品目。

六本木で「渡会美容クリニック」を経営する
美容整形外科医の渡会(とかい)医師(52歳)と、
ジムで知り合った、ものを書く仕事をしている僕
(村上春樹自身を指しているのかは定かではない)。

物語では渡会医師の数奇な人生が描かれるのだが、
彼にはアフターアワーズに遊ぶ
たくさんのガールフレンドがいる。

ただし、彼自身も特定の女性に絞り込まない代わりに
女性たちからしても彼はたいていナンバー2だとか
不倫や浮気相手でしかないという
うらやましいようなうらやましくないような人である。

そんな折、彼が珍しく本気になってしまった女性がいて
そこから彼の人生は大きく変わっていくのである。

村上春樹らしいちょっとエッジのあるストーリーながら
遊びの恋と本気の恋の違いってなんなんだろう?と
そんな普遍的なテーマを考えさせる作品だ。

4.シェエラザードのあらすじと感想

こちらはいたって非日常の世界が描かれる。

理由は描かれない(物語の本質に意味をなさないからだろう)が
「ハウス」に送られ住むことになった羽原(はばら)。

外に出ることも出来ずインターネットにもアクセスできず
外界との連絡を一切絶たれているに等しい彼に
週に2度ほど世話焼きにくる「連絡係」の女がいる。

この女を羽原は千夜一夜物語の王妃シェエラザードになぞらえ
シェエラザードと呼んでいる。

彼女は誰かから支持されて、羽原に対する「支援活動」
(ベッドでの情事を含むらしい)を行っており、
行為の後で羽原に興味深い、不思議な話を聞かせてくれるのだ。

その話が、読み手をぐいっと引き込む。

個人的には、非日常の世界観よりも
彼女が羽原にしてくれた昔話の面白さに興奮を覚えた。

5.木野のあらすじと感想

タイトルである木野は主人公の名前であり、
彼が経営するバーの店名。

彼はある時、妻に裏切られ(浮気され)たことから、
勢いのあまり家を出て会社を辞め、
青山に小さなバーを開いた。

そして、そこに訪れる不思議な客たちとの
深くなり過ぎず、しかし浅過ぎない交流が描かれる。

だが、平穏な時間は長くは続かない。

ある時、急にバーの空気が変わるのだ。

常連客(猫を含む)が姿を見せなくなり、
代わりに不吉な印象を与えるような蛇が姿を現す。

その理由とは?

ちょっとスピリチュアルであり、1Q84のような
日常に摩訶不思議感を巧みに入れ込まれた世界が
独特のハーモニーを奏でる作品。

吸い込まれるように読んでしまった。

6.女のいない男たちのあらすじと感想

本書の最後を飾り、表題作でもある6作目
女のいない男たちは、この単行本のための書下ろしだそう。

本書はバラバラの世界観を持つ6つの短編が
入っているわけだが、一貫して男と女の関係が
描かれているという共通項がある。

そんなテーマを串刺しにして軸を示すような
意味合いもある作品であるのかもしれない。

元彼女が自殺した。

そんな知らせを元彼女の現夫から聞かされ(深夜の電話で)
様々な思いに耽る僕。

僕としては、「あの時のあの発言が」とか
「あの時のあの行為が」なんていろいろ考えるわけだが
所詮それはこちらの自己中心的な思いに過ぎず
向こうは全然そんなことを気にしていないかもしれない。

だから考えても仕方がないんだけど、
でもやっぱり考えちゃうよね・・・みたいな、
そんなことってないだろうか?

この作品が最後にあったおかげで
私は個人的にそんなテーマを感じた。

まとめ

当たり前だが、本書は娯楽作品であり実用書ではない。

したがって読まないと困ることは一切ないし
是が非でも読むべきと薦める類のものでもない。

ただ、読後はそれぞれがそれぞれの心に残る何かがある。

したがって、あなたがこれから先の人生において
無味乾燥な機械的な日常を過ごすのではなく、
ちょっと湿った人間味のある深みのある人生を感じたいなら
それは読んでおいた方が良いのかと思う。

私はこの記事で、各物語の簡単なあらすじと感想を書いたのだが、
それは所詮薄っぺらい表面だけだ。

自分で書いておいてこんなことを言うのもあれだが、
この内容だけで、村上春樹が描きたかったものを感じ取れる
わけがないのである。

深い味わいを感じたいのであれば
是非一度、本書を最初から最後までじっくりと読んでいただくことを
オススメしたい。

人によっては、人生が変わる一冊になるかもしれないのだから。


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